「簿記? 数字は苦手だし、そういうのは税理士さんに任せるよ」。その気持ち、よく分かります。でも、経営者なら“2枚の表”だけは自分で読めるようになっておきたい。今日お伝えするのは、細かい仕訳のやり方ではありません。損益計算書(PL)と貸借対照表(B/S)——このたった2枚が読めれば、あなたの経営判断は変わります。
技術だけで開業して、私は一度つぶした
私は27歳で一度開業し、数年で廃業しました。理由ははっきりしています。経営も簿記もろくに学ばず、「技術さえあれば食べていける」と思い込んでいたからです。最初の数か月は患者さんも来て、順調に見えました。でも、いくら残っているのか、何にお金が消えているのかを把握していなかった。気づいたときには、資金が底をついていました。
技術は素晴らしいのに、お金が原因で店をたたむ治療家を、その後も何人も見てきました。技術力と経営力は別の能力です。そして経営力の土台になるのが、どこで儲かり、どこで漏れているのかを読む力——つまり簿記の“さわり”なのです。
覚えるのは、たった「2枚の表」だけ
どんな会社も、決算のときに必ず2枚の表を作ります。ひとつが損益計算書(P/L)、もうひとつが貸借対照表(B/S)です。名前は難しそうですが、役割は驚くほどシンプルです。
まずはこの2つだけ、順番に見ていきましょう。ここさえ分かれば、決算書を渡されても「どこを見ればいいか」が分かります。
損益計算書(PL)=もうけの成績表
PLは、1年間の「経営成績」を表します。仕組みは足し算・引き算だけ。売上(収益)から費用を引いて、残ったものが利益——これだけです。大きな売上から、家賃・材料・人件費といった費用が差し引かれ、最後に手元に残るのが「利益」だとイメージしてください。
「お金のために働いているんじゃない」という思いは、治療家なら誰しも持っています。でも、生活もスタッフの雇用も、お金がなければ守れません。利益は“欲”ではなく、お店を続けるための燃料。PLを見る習慣は、その燃料が足りているかを確かめる作業です。
貸借対照表(BS)=財産のスナップショット
もう1枚のBSは、ある時点での「財政状態」を表します。特徴は左右に分かれていること。左に資産、右に負債+純資産を並べ、左右の合計は必ず一致します。これが「資産 = 負債 + 純資産」という関係式です。
「借金=悪」というイメージがあると、最初はBSに馴染みにくいかもしれません。でも借入で現金を調達すれば、その分だけ資産(現金)が増えます。問題は借金の有無ではなく、その資金で利益を生めているか。銀行が融資を判断するときも、まずこのBSで“お店の体力”を見ています。
覚え方はカンタン。PLは「動画」、BSは「写真」です。PLは1年間の動き(もうけ)を撮った動画、BSは決算日という一瞬を切り取った写真。この2枚がそろって、はじめてお店の全体像が見えてきます。
PLとBSは、見ている“ところ”が違う
2枚とも大事ですが、役割はまったく別物です。混同すると「黒字なのにお金がない」といった落とし穴にハマります。下の4点で違いを整理しておきましょう。
利益は出ているのに、売掛金の入金が遅れて手元現金が枯れる——いわゆる黒字倒産は実際に起きます。だからこそ両方を並べて見る。「もうかっているか(PL)」と「もつのか(BS)」は別の問いだと覚えておいてください。
数字が読めると、経営判断が変わる
なぜ2枚の表が大事なのか。数字が読めると「なんとなくの経営」から抜け出せるからです。値上げすべきか、スタッフを増やすべきか、機器に投資すべきか——こうした判断は勘ではなく数字で決めるもの。PLとBSは、その判断のよりどころになります。
逆に、お金の動きを把握できないと、なぜ今の収入がこの額なのかすら分かりません。私が一度つぶしたのも、まさにここでした。まずは月に一度、自店の数字にざっと目を通す。それだけで景色が変わります。
記帳や申告は「任せる」のも正解
ここまで「読む力が大事」と伝えてきましたが、数字を“作る”作業まで全部自分でやる必要はありません。日々の記帳や確定申告は代行に任せ、自分は施術と経営判断に集中する——これも十分に賢い選択です。読む力さえあれば、上がってきた数字を経営に活かせます。
「経営者も簿記3級を取るべき?」——資格までは不要です。PLとBSの”読み方”さえ分かれば十分。また、借入があってもBSがすぐ悪いわけではありません。大事なのは、その借金が資産(設備など)を生んでいるか。数字は”善悪”ではなく”状態”として読みましょう。
よくある質問
- 技術力と経営力は別。経営の土台として、簿記の“読む力”が要る
- 覚えるのは2枚だけ。PL=もうけの成績表、B/S=財産のスナップショット
- PLは「動画(期間)」、B/Sは「写真(時点)」。役割が違うから両方見る
- 数字が読めれば経営判断が変わる。記帳や申告は代行に任せる手もある
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