「投資はこわいから、とりあえず貯金」。まじめな人ほど、そう考えます。でも実は——銀行に円で預けておくことも、”日本円100%”という立派な集中投資なんです。しかも、ただ持っているだけでその価値はじわじわ減っていく。今日は、インフレと円安という2つのリスクをやさしく解説し、「円だけ」から抜け出す分散という答えを図解で紹介します。
インフレ=「モノの値段が上がる」=「お金の価値が下がる」
インフレとは、モノやサービスの値段が上がっていくこと。裏を返すと、同じ1000万円で買えるモノが、だんだん減っていくということです。日本も、日銀(日本銀行)が物価上昇率2%を目標に掲げ、実際にここ数年、食品も光熱費もじわじわ値上がりしてきました。
実感としても——外食も、コンビニのお弁当も、以前より少しずつ高くなっていませんか。同じ買い物をしているのに支払いが増える。それが、あなたの円の“買う力”が静かに削られているサインです。物価が上がるとき、じっと持っている現金の価値は、その裏側で下がっているのです。
2%が30年続くと、1000万円は”実質552万円”
「たった2%」と思うかもしれません。でもこれが毎年続くと、複利で効いてきます。物価が年2%で30年上がると、全体で約1.81倍に。つまり——今の1000万円の”買う力”は、30年後には実質552万円ほどまで下がる計算です。銀行に置いておくだけで、これだけ目減りしてしまうということ。
しかも、普通預金の金利は物価の上昇に追いつかないことがほとんど。たとえば普通預金の金利が年0.1%で物価が年2%なら、差し引き毎年1.9%ずつ”買う力”が減っていく計算です。金庫に入れても、タンス預金でも同じ。つまり「何もしないで円で持ち続ける」こと自体が、静かなリスクになり得る。「減らないから安全」という感覚は、インフレの時代には通用しにくくなっているのです。
もう一つのリスク「円安」
円には、もう一つの弱点があります。それが円安。円の価値が外貨(ドルなど)に対して下がることです。日本は食料やエネルギーの多くを輸入に頼っているため、円安が進むと輸入品・ガソリン・海外のモノやサービスが高くなる。資産をぜんぶ円で持っていると、この変化から身を守るすべがありません。実際、円安が進んだ年には、ガソリンや輸入食品、海外旅行の費用がぐっと上がりました。給料は円、貯金も円。そこへ円安が重なると、家計は二重に圧迫されます。
答えは「分散」=円以外の資産も持つ
では、どうするか。答えはシンプルで、円だけに集中させず、いろいろな通貨・資産に分けること。中でも手軽なのが、世界中の企業(=さまざまな通貨建ての資産)にまとめて投資できる全世界株式(オルカン)です。円が弱くなっても、外貨建ての資産がカバーしてくれます。
なぜ株式が備えになるのか。理由は2つあります。1つは、企業はインフレの局面で自ら値上げをして売上を伸ばせるから。モノの値段が上がる世界では、そのモノを”売る側”である会社を持っておくのが理にかなっています。もう1つは、海外企業の株は外貨建てだという点。円安が進むと、円に換算した価値はむしろ上がります。つまり全世界株式は、インフレにも円安にも同時に備えられる”守り”として働いてくれるのです。
私自身、はじめてオルカンを買ったときの基準価額は約17,000円。それが約5年で38,000円ほどになりました。金額でイメージすると、当時170万円分を買っていたら、今は約380万円ほど(同じ約2.2倍の計算)。また、インフレに強いとされる不動産も、1,000万円ほどで買った物件が、今は1,500万円ほどに。“円のまま”置いていたら得られなかった変化です。もちろん値下がりする時期もありますし、あくまで私の一例。それでも「余裕資金は円以外にも分けておく」ことの手ごたえは、はっきり感じています。
「投資」と聞くと身構えてしまいますが、やっていることはシンプル。“円という1つのカゴ”に、全部の卵を入れないだけです。カゴを複数に分けておけば、どれか1つが落ちても全部は割れません。分散とは、値上がりを当てにいく”攻め”ではなく、どう転んでも大きくは負けない”守り”の発想。だからこそ、相場を読む時間のない忙しい治療家にこそ向いています。
むずかしく考える必要はありません。全世界株式(オルカン)を1本、新NISAで積み立てるだけで、この3つの分散(通貨・資産・時間)が自動でそろいます。「円だけ」の状態を、少しずつ世界へ広げていくイメージです。
「全財産を投資に回そう」という話ではありません。順番が大事で、まず生活費の半年分ほどは現金で確保(生活防衛資金)。そのうえで、当面使わない余裕資金だけを、新NISAで少額から分散投資に回すのが王道です。投資に元本保証はありません。
よくある質問
- 円だけで持つ=”日本円100%”への集中投資。安全に見えて実はリスクが偏っている
- 物価が年2%で30年続くと、1000万円の”買う力”は実質552万円ほどに目減りする
- 円安が進むと、輸入品や海外のモノが高くなる。円だけでは身を守れない
- 答えは「分散」。全世界株式なら通貨も資産も自動で分散でき、時間の分散=積立も有効
- まず生活防衛資金を現金で確保→余裕資金を新NISAで少額から。元本保証はない
※本記事は情報提供が目的で、特定商品の購入を勧めるものではありません。投資は自己責任・元本保証はありません。実質価値の数字は物価上昇率を一定と仮定した試算で、将来を保証するものではありません。
